Recherche
ディートマル・キューブルベック氏 インタビュー
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団で首席トロンボーン奏者として活躍し、ウィーン国立音楽大学で教授を務めるディートマル・キューブルベック氏。2020年11月のウィーンフィル来日ツアー中に、ご愛用中の楽器や、来日ツアーについて、書面インタビューにてお話を伺いました。(2020年11月、東京にて)
「ウィーンの音」を表現して、共感し合いたい
現在ご使用されているトロンボーンの機種を教えてください。
キューブルベック(敬称略) 〈B&S〉 “マイスタージンガー MS14”です。
なぜ〈B&S〉を選んだのですか。
キューブルベック 音楽家として長い話になります。私はウィーンのオーケストラの楽員として、ウィーン特有のホルンやオーボエなど、特別な楽器を演奏する仲間たちを常に尊敬しており、彼らに倣って「ウィーンの音」を表現しなければならないと感じていました。そして、ウィンナーホルンの音に完璧に調和するためには、ドイツ式トロンボーンの音が理想的だと考えていました。しかし、実際には長年アメリカ製のトロンボーンを演奏していました。カルテットやソロの演奏をするにはアメリカの楽器の方がはるかに楽に感じたからです。
そこで、ウィーンの音を奏でつつ、快適に演奏できる楽器を求め続けていたところ、ゲルハルト・マイネル氏(訳注:金管ブランド〈メルトン・マイネル・ウェストン〉のマイネル家7代目当主)に出会い、問題を解決することができました。〈B&S〉のトロンボーンは、私の求める2つの要素を兼ね備えていたのです。
“マイスタージンガー MS14”のどのような点が気に入っていますか?
キューブルベック 温かみのある豊かなサウンドを奏でると同時に、あらゆる音域で技術的に難しいパッセージを演奏することができるところです。
“マイスタージンガー MS14”はパワフルなトロンボーンですが、ソフトに演奏をする際も、暗い音から明るい音まで幅広く対応できます。抵抗感も心地よく、今まで吹いてきたどの楽器よりもピッチが良く、全音域において均一です。
ウィーンフィルは独特の楽器を使用しているパートもありますが、何かカスタマイズされているのでしょうか。
キューブルベック 通常のモデルです。ただし、ビュッフェ・クランポン グループが開発した最新の「ICON ™ バルブ」(アイコンバルブ)がついており、音の自由度が上がったため、リーフレックを使って調整しています。
“マイスタージンガー MS14”から特別に得られたものはありますか。
キューブルベック この楽器は自分の延長線上にあるような、あるいは自分の一部のような感覚があります。自分の音を直接聴衆へ届けることができます。
キューブルベックさんにとって楽器はどのような存在なのでしょうか。
キューブルベック 私にとってトロンボーンを吹くことはいつも重要なことでした。自分自身と相性の良い楽器を演奏し、共感しあうことが大切です。楽器をケースから出して、演奏する前のわくわくするときといったら!
友情を表現するには音楽に勝るものはないと思います
2020年という特別な年に来日して演奏していただけることは我々にとって嬉しいことです。ウィーンフィルのメンバーとして、日本に対して特別な何かを感じていらっしゃいますか。
キューブルベック 私たちウィーンフィル奏者全員にとって、このような特別な時期に世界中の人々との友情を育むことは重要な義務であり、その友情を表現するには音楽に勝るものはないと思います。
だからこそ、日本の友人のために演奏する機会を得られたことにとても感謝しています。この関係は他に類を見ないものです!
日本で楽器を演奏する人々に、メッセージはありますか。
キューブルベック 音楽活動をする機会がある人は、一人でも、他の人と一緒でも、とにかくやってみること! それだけでも危機を乗り越えるための大きな助けになると思います!
素晴らしい演奏を、ありがとうございました!
2020年11月のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団来日ツアー中の写真。左から、ヴォルフガング・シュトラッサー氏、マーク・ガール氏、クリストフ・ジグラー氏、ディートマル・キューブルベック氏。ツアー中、トロンボーンセクションの3名が〈B&S〉、ジグラー氏が〈メルトン・マイネル・ウェストン〉の楽器を演奏した。
※ キューブルベック氏が使用している〈B&S〉 “マイスタージンガーMS14”の紹介ページはこちらをご覧ください。
※ ビュッフェ・クランポン グループが開発した最新の「ICON ™ バルブ」(アイコンバルブ)については、〈アントワンヌ・クルトワ〉の“CREATION AC422 Paris”開発インタビューで紹介されています。こちらをご覧ください。